日本政府が行う北米地域との青少年交流事業「KAKEHASHI Project- The Bridge for Tomorrow」に沖縄から参加した県立向陽高と県立八重山高の生徒計46人がこのほど、ロサンゼルスとシアトルに合わせて10日間滞在し、ホームステイしたり地元の学校を訪れるなど貴重な経験を積んだ。7月には南カリフォルニアから約50人の高校生が沖縄を訪れており、両国親善の「懸け橋」となる若者による日米交流は深まるばかりだ。 同事業は昨年始まり、日本経済の再生に向け、国際的な視野を身につけた次世代の人材を育成することが目的。米国からも生徒を日本に迎え入れており、これらの費用は政府が負担する。 生徒は、日米文化会館で行われた在ロサンゼルス日本総領事館主催の歓迎会に臨んだ。訪日プログラムの参加者と親睦を深め、日系諸団体の代表や沖縄出身者からは激励を受けた。また、スライド写真を使ったプレゼンテーションを行い、日本文化と沖縄固有の文化や習慣を紹介した。 須賀正広首席領事があいさつに立ち、参加者にエールを送った。首席領事は、日本や日本製品、すしなどの食文化と、アニメ、漫画、コスプレなどJポップカルチャー、クールジャパンの紹介に期待を寄せながら「人生において貴重な機会になる」と、プログラムの重要性を説いた。レスリー・イトウ日米文化会館館長は、日本文化の伝承と普及という同館の役割について説明し、日本との密接な関係を強調。「日米の未来を背負って立つのは、みなさん。『日本の文化親善大使』として頑張ってほしい」とエールを送った。 プレゼンテーションは、両校の男女生徒がそれぞれ行った。向陽高は、郷土の食文化を主に紹介した。「食物繊維が豊富に含まれるゴーヤ、そして黒糖は、おいしいだけでなく、健康的である」などと、全国一を誇る長寿を支えていると強調。八重山高は、地元の風習を軸に展開し、台風対策として石垣や防風林を備え、家の屋根や門戸に置くシーサーは魔除けだと説明。「豊年祭」や三線を演奏する琉球民謡は「地元の大切な行事と文化である」と力を込めた。 沖縄出身の南加県人会協議会会長の当銘貞夫さんと、同協議会元会長の比嘉朝儀さんは、郷里から来た前途ある若者にアドバイスを送った。当銘さんは「アメリカで学んだアメリカの良さを生かしてもらいたい。ウチナーンチュ(沖縄)魂を持ち続け、どこの国に行っても通用する大人になってもらいたい」と願った。比嘉さんは「この貴重な経験を沖縄に持ち帰って、同世代の人に伝えてほしい」「日本の発展は、沖縄の発展につながるので、日本人としての日本文化、沖縄人としての沖縄文化を忘れないで、世界に羽ばたいてもらいたい」 八重山高の大前みなみさんと中村華さんは、サンディエゴの北方エンシニタスに住むネイサン・ヌーウマンさん(16)の級友らと会話を楽しんだ。海に面したお互いの町の写真を見せ合ったり、学校生活や将来の夢などを語り合ったという。プログラムについて大前さんは「日本と違う多くのことを学べてよかった。国際的な仕事に就きたいので、このプログラムに参加できていい経験になった」と喜んだ。英語が不得手だという中村さんだが「アメリカに来て、ネイティブの人と話すうちに、会話が自然にできるようになったのがうれしい。海外に出ようと思うきっかけになった」と目を輝かせながら大志を抱いた。2人は「英語をもっと話せるように勉強を頑張りたい」と口を揃えた。 ヌーウマンさんは、アニメが好きで3年前から日本語を習い、うまく話す。今夏は懸け橋プロジェクトで沖縄を訪れ「日本が大好きになった。交換学生プログラムは、すばらしい」と述べ、日本の友達と連絡を取り合っているという。「大学生になっても日本語を習い、日本にも留学してみたい」と希望する。 カルバーシティから来たサシャ・ホーランドさん(12)は2年前に、姉妹都市提携を結ぶ大阪・貝塚でホームステイを2週間経験し「いろんな所に連れて行ってもらい、日本食が好きになってよかった」。訪問した津田小学校では、教室に入るにも靴を履き替えることが印象に残り「日本は清潔で、気持ちがよかった。引き戸が多く、フスマが気に入った」と振り返る。「また日本に行きたいので、日本語をもっと熱心に勉強したい」と意欲を示した。 同交流事業は、国際交流基金が支援する。同基金のロサンゼルス日本文化センターの高須奈緒美所長は、両国の若者が、英語と日本語を使い分けながら会話する光景を目にし「20歳前の若い人たちは、言葉の壁を感じずに楽しく話すので、若い時の交流のすばらしさをあらためて感じた」と話した。日本語学習を奨励する所長は、米国人が日本語を話す姿を見て、冥利に尽きるとし「そういう道筋をつけていくのがコーディネーターの仕事。子供たち全員が自分の子どものように思え、見ていてうれしい」と感激した面持ちで語った。【永田潤、写真も】
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