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「5万回斬られた男」:脇役の福本清三が初主演

 京都・太秦撮影所で制作される数々の時代劇に出演し「5万回斬られた男」の異名をとる、斬られ役俳優の福本清三の初主演映画 「太秦ライムライト」(落合賢監督)のプレミアが11月24日、ビバリーヒルズの劇場で行われた。レッドカーペットに登場した福本は、日の目を見たことに「一生懸命やっていれば、どこかで誰かが見ていてくれる」と強調。上映後はスタンディングオベーションを贈られ「人生で初めてで、夢のよう」と、感涙にむせんだ。  福本が「日本一」や「伝説」と称されるのは、主役を引き立てる脇役を好演するためだ。だが、今回は共演したスターの松方弘樹 、小林稔侍、萬田久子らと立場は逆転。「『死に様』を見せるのが仕事」と誇りを持つ福本が一転、映画では斬られ役一筋の「生き様」が描かれている。  上映会には、福本とともに、映画で殺陣を指南した山本千尋と、落合賢監督が登壇した。3人は舞台あいさつを行い、質疑応答では撮影の逸話などを紹介した。  司会者から「Swordsman(剣士)」と紹介された「サムライ・福本」は、「みなさんから拍手をいただき、感動で胸がいっぱいで、舞い上がっている」と、感謝に耐えない様子で「たくさんの拍手を宝物に、頑張りたい」と、男泣きに泣いた。55年間という長い役者生活で、ようやく浴びた脚光は「(カメラの無数のフラッシュを浴び)まぶしく、レッドカーペットを歩き、今でも足がガクガクしている。大役をまかされ、長いことやれば、何かいいことがあるものだ」と、しみじみと語った。時代劇の低迷について問われ「若い人に時代劇を分かってもらうために、この映画を作った。立ち回り技術を若い人に何とか伝えていきたい」と抱負を述べた。  落合監督によると、福本は撮影中、カメラのフレームの端に立ち、目立たないようにする癖があったという。「主役なので、真ん中に来て下さい」と、指導したことを明かすと、会場はどっと沸いた。監督は、自身について「12歳から映画制作を始め、ハリウッドを目指して来たので、ここで自分の作品を公開できるのは、表現し難いほどの気持ち」と、感慨深げに話した。  アフターパーティーで、福本は参加者から写真撮影とサイン攻めにあった。「こんなに写真を撮ってもらって、サインしたのも人生で初めてで、サインにならなかった」と、照れながら慣れない手つきで、すべてのリクエストに応えた。時代劇が下火の日本と裏腹に、米国では多くの侍ファンに囲まれたことが、励みになったといい「いい映画を撮り、ニューヨークとロサンゼルスの劇場で、みなさんに見てもらえるように頑張りたい」と、いっそうの精進を誓った。「ロサンゼルスは、僕ら映画人にとって『聖地』」と敬意を表し、松方弘樹が果たしていないレッドカーペットを歩き「お兄ちゃん(松方)は、うらやましがって、喜んでくれると思う。僕1人の力ではなく、みんなで勝ち取ったもの」と、控えめな福本らしいコメントは、本職の脇役に戻っていた。  映画は日本語で、英字幕がつく。米国での劇場公開は、12月5日(金)からロサンゼルス、パサデナ、アーバイン、ハワイ、ニューヨーク、オレゴン、テキサス他、カナダ3都市で予定されている。ウエブサイト―  www.uzumasalimelight.com  問い合わせは、電話310・445・0818。【永田潤、写真も】  【あらすじ】かつて日本のハリウッドと呼ばれた時代劇の聖地、京都・太秦。日映撮影所に所属する、斬られ役一筋55年の大部屋俳優、香美山清一(福本清三)は、半世紀近く続いたテレビ時代劇ドラマの打ち切りに直面する。後続番組として作られた若者向け時代劇には、70歳を過ぎた老優の出番はなく、次々と仲間たちが撮影所を去っていく中、香美山は1人残って稽古を続けていた。そんなある日、京都の駆け出し女優、伊賀さつき(山本千尋)から稽古を頼まれる。香美山の指導のおかげで腕を上げたさつきは、チャンスをつかみ、スター女優の道へと歩みだすが、対照的に香美山には老いが忍び寄っていた。

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