年間を通して、各種芸術文化の優れた作品の企画展を催すパサデナのシュメイ・アーツ・カウンシルは、3人の米国人折り紙アーティストの作品を並べた「The Curious Art of Origami」展を開催している。千年以上の伝統を持つ日本の文化が、米国に伝わり約100年の時を経て独自に洗練された。芸術の秋たけなわの展示では、米国人ならではの奇抜な発想で創られた作品13点を鑑賞することができる。 出品するアーティストは、ロバート・J・ラングさん、リンダ・ミヤハラさん、ギアン・ディンさんの3人。同展示を構成したアジア芸術のキューレーターのメア・マッカーサーさんは、展示について、日本伝統の純粋な折り紙と差異があるとしながら「それぞれのアーティストの凝った技法から、アメリカの質の高い芸術作品を見ることができる」と説明する。 ラングさんは、かつて電子エンジニア兼物理学者で科学者だった異色の経歴の持ち主。NASA(米国航空宇宙局)のジェット研究推進所などに従事したが、作品作りと折り紙の本の執筆活動(著書6冊)に専念するために退職し13年が経つという。折り紙の技術を、他の分野に応用しており、エアバッグなどの自動車産業や、折り畳み式の大型望遠鏡、ソーラーシステムを製造する宇宙産業などの開発に役立てている。折り紙と数学を融合させ、市松模様の折線を入れた図案を作り、作品とともに披露している。動物の作品が多く、どれも1枚の紙からできたとは思えない。ラングさんは「子供の頃から46年間、折り紙に情熱を傾けている。数学・科学の要素が入った私の作品を見てほしい」と話している。 日系3世のミヤハラさんは、日本出身で同じく折り紙アーティストだった祖父の影響を受けて、子供の頃から作品を作り続けている。日本伝統の技法を基調とし、作品を3次元化させ、連鶴を得意とするほか、作品を平面化して額に入れて飾るのも特徴。また、折り紙の要素を取り入れ、実際に着用できる着物やドレスなどペーパーファッションの作品にも取り組んでいる。ミヤハラさんは「千羽鶴は、日本では病気や怪我の回復、世界平和などを祈念して折るが、私の作品はそれらとは少し違う。1枚の紙から生まれる芸術を味わってほしい」と話す。 ベトナム系米国人のディンさんは、建築家を本業とする。作風は、曲線美を強調し、水彩画用紙などの厚手の紙に水分を含ませて曲げ、滑らかなラインを生かし、折り目はわずか2、3カ所のみ。作品は抽象的で、スピリチュアルな世界へ誘う。ディンさんの作品について、マッカーサーさんは「(折り目が少なく、曲線主体のため)一見ソフトに見えるけど、伝わってくるメッセージはとてもパワフルである」と評する。 同展示についてマッカーサーさんは「折り紙は、子供だけが折ったり、単なる趣味ではなく、高いセンスを必要とする芸術である」と強調する。日本発祥だが「欧州のイスラエル、英国、フランス、スイス、そして米国、南米諸国など世界に広まり、各国の文化が融合して、独自の発展を遂げている。作品には、それぞれのアーティストのメッセージが込められていて、独創的な新しいスタイルを見てもらいたい」と話している。 入場は無料。展示は11月19日まで、月曜から土曜の午前9時半から午後6時。 詳細は、電話626・584・8841。ホームページ― www.shumeiarts.org 【永田潤、写真も】
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