困難な状態に直面している人に財政支援を行う非営利団体「Get Up 8」は10月5日(土)午後6時から、募金集めのためのオークションをオレンジ郡ブレアにある「ブレア・コミュニティー・センター」(695 E. Madison Way)で催す。同イベントの収益は、夫を突然亡くしたストレスから自身も病に倒れる中、2人の幼い娘を育てている百合子・加藤・クリストファーさんら2人に授与される。【取材=中村良子】
「Get Up 8」は2012年9月、ライアン・オキタさんら友人グループにより「困っている人を助けたい」との純粋な思いから発足。理事10人とスタッフは全員ボランティアで運営し、春に行うアウトリガーレースと秋に行うオークションイベントを通じて募金を捻出している。基金の名前は、何度失敗しても諦めずに立ち上がることを例えたことわざ「七転び八起き」から来ている。
今回の募金受領者の1人、トーレンス在住の百合子さんは、今年3月、健康そのものだった夫クリスさん(40)を突然、心臓発作により亡くした。百合子さん自身も、クリスさんを見舞っている最中に病院内で倒れ入院。左目の視力と左の聴力を失い、現在も顔の左側にけいれんが残り、左半身がしびれた状態が続いている。
クリスさんは、スポーツ奨学金で大学に入学し、足を負傷するまでプロの入団テストを受けるなど、学生時代は優秀なバスケットボール選手だった。日ごろから食事や体調管理には気をつけ、ジムに通い総合格闘技のトレーニングをするなど体力には人一倍自信があった。
「逆にそれがよくなかったのかもしれない。体力に自信があったから、相当具合が悪くならない限り病院に行くことはなかった。せめて、健康診断にだけでも行っていればと思うと悔しい」
その日、いつもと同じ朝を迎えた。2人の娘、寿百花(すもも)ちゃん(10)と愛百来(あゆら)ちゃん(7)をデイケアに連れて行くクリスさんの後ろ姿に百合子さんが、「昨日作ったチキンのホイル焼きをランチに持っていったら」と話しかけると、「今夜帰った時に食べるから取っておいて」と言ったのが、クリスさんと交わした最後の会話となった。
「緊急治療室で胸に電気ショックを与えられている心停止状態のクリスを見ても理解できなかった。体を鍛えていたし、すぐに目を覚まして起き上がってくるようにしか見えなかった」
職場で倒れ、緊急病院に搬送されるまで20分間心停止状態が続いた。その後奇跡的に心拍は回復したが、自身で呼吸することはできず、呼吸補助装置が装着された。しかしそれから2日後、医師からほぼ脳死状態だと告げられた後、百合子さんは倒れ同じ病院に入院した。
医師から百合子さんはストロークを起こした可能性が高いと言われたが、原因はいまだはっきりとせず、後遺症が残る中、現在も原因究明の検査が続いている。そして百合子さんが入院している間に、クリスさんの心拍が停止したことを告げられた。
夫婦ともに入院した病院が保険のネットワーク外だったため、自宅に届く治療費はすでに10万ドル近くに上る。また、その必要性について話し合ってはいたが、「まだ若いから」とのことで生命保険の加入も先送りにしていた。
百合子さんの部下で、同基金の理事でもあるジェイソン・シミズさんは、百合子さんに同基金の支援を受け入れるよう説得。しかし長いこと自立した生活を送ってきた百合子さんにとって、他人からの支援を受け入れるのは容易ではなかった。
「いろいろな人に声をかけられ、私のことを本当に気にかけてくれる人がいることに初めて気付いた。他人からガムをもらうことすらためらってしまう性格だけれど、今回は2人の子どもを最優先に考えた。助けてくれる人には言葉にならないほど感謝している。今は、真っ暗だった目の前に、小さな光が見えてきたような気がする」
同基金のオキタ理事は、「困難にぶち当り、途方に暮れている人や家族を助けられることを嬉しく思う」と述べ、より多くの人を支援できるよう、年内にはウェディングレジストリーと同様な手法で、困っている人が必要としている商品をサイトに掲載し、寄付者が手分けして購入するシステムを立ち上げる予定だとした。
10月5日のオークション参加費は、ディナー、飲み物、デザート、サイレントおよびライブオークションの参加費を含み、1人100ドル。詳細およびチケットの購入はウェブサイトで―
getup8.org
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